Sunday, 26 March 2017

太宰の作品は、私たちに送られる温かな声援

『迷宮TRANOVEL 太宰治「走れメロス」と中期短編集』 (BS日テレ)

太宰(津島修治)について、親族 津島廉造さん
「聖書の話ですね。
マタイ伝を3年掛けて勉強したと。
『己を愛するがごとく汝の隣人を愛せよ』、これは強調してました。
それと同時にですね、『優』という字を知ってるかと。
これは人偏に憂うという字だよと。
これは言ってみれば、人を愛すること、そのつらさに敏感であること。
教養というのは、人のつらさに敏感なことを言うんだよと。
これを持ってるそういう人が本当の教養人なんだよと」
「本当は人間を本当に愛したいんだけれども、その難しさとの葛藤、が色んな形で小説の中には出て来てるんじゃないかなと」。

太宰に宛てた、妻 美知子の母 石原くらの言葉:
「むりをしない様に一歩一歩正しい道をあゆんで行くのが一番いいと思ひます。
まごころと職業に対する熱意とが何よりのたからです」。
太宰の言葉:
「たとひ流行作家には、なれなくとも、きつと、いい立派な仕事いたします」。

太宰らしさ。
最後の一行:「勇者は、ひどく赤面した」。
分かる〜( ̄ー ̄/。
太宰が描く、真っ直ぐで、不器用で、人間臭い/人間らしい主人公(/太宰自身)に我々は共感するし、彼らをすごく身近に感じる。
「走れメロス」

太宰について、親族 津島慶三さん
「本物という言葉は何回も出て来ますよ。
本物の人間になれよっていう」
「一番大事なことは美談ですよ。
漁師が嵐の日に放り出されて、辿り着いたのが灯台守の、窓枠に手が付いて、ひょっと中を見たら丁度夕げの時間で、楽しそうな夕ご飯をみんなで食べてたのを見たら、ついその掴んでいた手が緩んで、流されてもう帰らぬ人になってしまったと。
これはもう誰も知らない訳だ。
もう死んじゃった訳だから。
そういうことを書くのが小説家の務めだと言う」
「心の奥底から出て来る美談というやつ、それとの葛藤だったんじゃないかな、彼の一生というのは。
死に物狂いという。
だけども、それぐらいしないと、みんなの喜んでもらえる、そんな小説にならないんでしょうね、きっと」。

ナレーション:
「太宰治。その作品は、いつも、私たちに送られる、温かな声援」。
本当にそう思います。

******

「ああ、わるくなつた。この二、三日、ちつとも勉強すすまないぢやないの。あたしは毎朝、お客さんの書き散らした原稿用紙、番号順にそろへるのが、とつても、たのしい。たくさんお書きになつて居れば、うれしい。ゆうべもあたし、二階へそつと様子を見に来たの、知つてる?お客さん、ふとん頭からかぶつて、寝てたぢやないか。」
 私は、ありがたい事だと思つた。大袈裟な言ひかたをすれば、これは人間の生き抜く努力に対しての、純粋な声援である。なんの報酬も考へてゐない。私は、娘さんを、美しいと思つた。

太宰治 「富嶽百景」
posted by みのり at 19:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Sunday, 03 April 2016

「理由」を理解しなければ、「テロとの戦い」も終わらない

"더 테러 라이브 The Terror Live"  『テロ,ライブ』 (2013年韓国)


※ネタバレありますので、内容を知りたくない方はご注意下さい。


思っていた以上に重い映画でした。
もっとエンタテイメント性が強い映画なのかなと勝手に想像していたのですが。
重い内容。
主人公は"추격자" 『チェイサー』 (2008年韓国)で悪人を好演したハ・ジョンウ。

アナウンサー ユン・ヨンファ(ハ・ジョンウ)の生放送ラジオ番組に「パク・ノギュ」と名乗る人物から橋梁爆破の犯行予告電話が入る。
ヨンファは「いたずら電話」と相手にしなかったが、直後に近くの麻浦大橋で爆破テロが起こる。

このテロのスクープを利用してラジオからTV番組キャスターへの返り咲きを目論むヨンファ。
ここから否応無しに事件の渦に巻き込まれて行く彼を待ち受ける、思わぬ運命。

リアルタイム演出により、実際のニュース番組LIVE映像のような緊迫感溢れる作品になっています。

ジュ警察庁長官(キム・ホンパ) 「政府はテロリストと交渉しない」。
これは日本政府の立場と同じですな…。

ヨンファらのニュース番組に出演したジュ長官のイヤホンに小型爆弾が仕掛けられており、生放送中に犯人が爆発させ長官の頭が吹っ飛んだ…。
結構えげつない場面がありましたがR指定は付いていません。
それどころか、「G」らしいです、まじか。

しかし、局でアナウンサーが使っているイヤホンに爆弾を仕掛けることができたということは局内の人間もしくは局に出入りしている人間だろう、とこの時点では推理していましたが<犯人。

ヨンファの上司 チャ報道局長(イ・ギョンヨン)えげつない…。
この人は視聴率と自分の出世のことしか考えていない。
ヨンファは今回のテロ・スクープをネタにTVキャスター復帰を局長に約束させるが、結局はヨンファの方が彼に利用されていたのだった。

爆破に遭った麻浦大橋が崩壊し、ヨンファの元妻で記者のイ・ジス(キム・ソジン)も犠牲になった。
絶望的なシーンです。
これはフィクションだけれどもへこむ…。

次に、犯人がヨンファらのTV局ビルの隣のビルを爆破し、隣のビルが倒れ掛かってTV局ビルも傾いた…何という映像。
本当に、前述の橋の崩壊とビルが倒れ掛かる映像は、あまりにも真に迫る衝撃映像です。

しかし、終盤に全ての事情が分かると切なくなります。
テロを起こす者にもそれだけの理由があるのです。

犯人は「パク・ノギュ」の息子 パク・シヌ(イ・デイヴィッド)でした。
麻浦大橋補修工事中に足場崩壊事故で川に落ち、救助されることなく亡くなった父親ら3人の作業員への大統領の謝罪を求めていた。
当時、政府からの補償や謝罪は一切無かったらしい。
終盤、シヌの言葉が胸に迫る。

ヨンファ 「何故だ。どうしてお前は俺を選んだ?」

シヌ 「親父は…あんたのニュースを見てた。理由?『信頼できるから』だと。馬鹿だよな。奴隷みたいに働かされ死んじまった。だから親父の名で謝罪を求めたんだ。一言謝るのがそんなに難しいことか?」

世の中の大抵のものは正義か悪、白か黒、と単純に分けられるものではない。
特に「正義」と「悪」は立場や見方によって180度も変わる。
我々はよく「テロとの戦い」や「テロに屈しない」等と言う。
テロ行為は間違っているということは間違いない。
しかし、テロを起こす者にもそれだけの理由があるのだ。
決してテロを正当化する訳ではない。
けれどその「理由」を理解しなければ、「テロとの戦い」も終わらないと思う。

なお、つっこみ所は色々あります。
「何故一般の若者がTV局でアナウンサーが使っているイヤホンに爆弾を仕掛けることができたのか?」、
「麻浦大橋にしてもビルにしてもあれだけ大きな爆破を起こすには相当量の爆薬・爆弾が必要。それをシヌはどこでどうやって入手、また一人でどうやって現地に仕掛けたのか」、
「不審な若者が不審物を運んで出入りできる現地ビルのセキュリティはどうなってる?」等。
まあしかしそういったことは置いといても、この映画はテロを描いて真に迫ったよくできた作品だと思いました。
posted by みのり at 05:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Sunday, 27 March 2016

韓国版 『世にも奇妙な物語』

"무서운 이야기"  『ホラー・ストーリーズ』 (2012年韓国) R15+相当


※ネタバレありますので、内容を知りたくない方はご注意下さい。


"해와 달" 「太陽と月」、"공포 비행기" 「恐怖のフライト」、"콩쥐, 팥쥐" 「秘密のレシピ」、"앰뷸런스" 「救急車」の4編ホラー・オムニバス映画。
韓国版 『世にも奇妙な物語』といったところか。
まあ無闇に怖がらせる感はある。

"해와 달" 「太陽と月」
終盤事情を知ると切ない系。

"공포 비행기" 「恐怖のフライト」
連続殺人犯系。
飛行機のコックピットのドアは蹴ったぐらいでは開かんわww何回か体当たりしてばたーんと外れたぞ(爆)なんでこんなにもろいのか。
といったつっこみ所はある。
しかも犯人がアンジャッシュ コジに似ていて爆<つっこみ所。

"콩쥐, 팥쥐" 「秘密のレシピ」
『ハンニバル』シリーズ系。

"앰뷸런스" 「救急車」
疫病パニック系。
posted by みのり at 04:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Saturday, 19 March 2016

一郎君と太宰

『サカナクションLIVE2014 〜不確かな未来へ舵を切る〜』 録画で「グッドバイ」を聴いて涙が出た。
これは現場に居ても泣くと思う。
以前から、一郎君の書く曲を聴いていると太宰と重なると思っている。
一郎君は人の弱さ、自分の弱さを曲にするからだな。
太宰も自分の弱さをさらけ出すような作品を書く人だから。
先程「ミュージック」と「グッドバイ」を聴いていて改めてはっきり分かった気がする。
(飽くまで自分の解釈ですが)


サカナクション - ミュージック
http://www.uta-net.com/song/140580/ (歌詞)





サカナクション - グッドバイ
http://www.uta-net.com/song/157966/ (歌詞)

posted by みのり at 01:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Sunday, 13 March 2016

悲劇

"魔警 That Demon Within"  『クリミナル・アフェア 魔警』 (2014年香港) R15+


※ネタバレありますので、内容を知りたくない方はご注意下さい。


重傷を負い入院していた武装強盗団「鬼王団」のメンバーで凶悪犯のホン・コン(ニック・チョン)は警察の隙を突いて逃げる。
一方、今回ホンと出会うことになった警察官 デイヴ・ウォン(ダニエル・ウー)には過去の事件によるトラウマがあるらしい。

デイヴは血の繋がっていないお婆さんの面倒を見ている。
彼女には警察官の息子がいたが、20年前に亡くなっている。
デイヴは彼の死に関わっているらしい。
そして、その亡くなった彼は今回出会ったホンにそっくり…。
しかし同一人物ではないと思われる。
年齢が合わない。

ホンとの遭遇により、封印していた過去の記憶が一気に蘇る。
デイヴの言動は徐々に狂気を帯びて行く。
幻聴や幻視の症状も出て来る。
その時点で既にホンは崖から落ちて亡くなっていたのだが、デイヴは自分が作り上げた幻のホンの姿を見る。

デイヴは狂気に駆られながらも鬼王団の連中を追い詰め、彼らと繋がっていた刑事 ベン・チャン(アンディ・オン)を追う中で、ガソリンスタンドにて爆発炎上により焼死する。

回想。
25年前、貧しい地区に住んでいたデイヴたちは強制撤去に来た警察と衝突。
その混乱の中で誤ってデイヴの父親 ウォン氏の身体に火が付き彼は死亡。
10歳のデイヴは目の前で父親が苦しみもがきながら焼け死ぬのを見ていた。
幼い彼は復讐を決意する。
警察側の先頭に居て、ウォン氏が投げた火炎瓶をはね返し、誤って彼の身体に火を付けてしまった警察官。
彼こそがお婆さんの息子だった。

デイヴはあの警察官の家を突き止める。
油を流し、火を付ける。

成程、そんな悲しい過去があったのか。
全てが繋がった。

デイヴもまた火に巻かれて亡くなったのが、何とも言えない、皮肉な最期であった。
心が痛む。

役者の方々、素晴らしい演技でしたね。
特にダニエル・ウーさん、デイヴの狂気の演技が素晴らしかった。
痛みが伝わって来て。
posted by みのり at 05:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする